「あ、いいじゃん」〜お客様の体験談より〜
抗がん剤治療を始めて、髪の毛がごっそりと抜けた日の夜、
お風呂場の鏡を見ながら、私はしばらく立ち尽くしていました。
これが現実なんだ、と。
頭では分かっていたのに、
心が追いつかない瞬間でした。
■ 息子にはまだ言えていなかった
うちには高校2年生の息子がいます。
普段はあまり多くを語らず、
「今日は部活どうだった?」と聞いても「ふつう」と返ってくるような、
ちょっと距離のある年ごろです。
ウィッグを使うことは決めていたけれど、
「息子になんて説明しよう」と、ずっと迷っていました。
■ 意を決して、ウィッグをつけてリビングへ
ある日曜日の朝、思い切ってウィッグをつけたままリビングに行きました。
髪型は、地毛に似せたショートボブ。
できるだけ、違和感のないように整えて。
息子はテレビを見ていたのですが、私を見るなり、ちょっと目を見開いてこう言いました。
「あ、髪、変えた?」
私は少し笑って、「そう。ウィッグなの」とだけ答えました。
■ 息子の言葉が、じんわり心に染みた
彼は一瞬間を置いて、こう言ったんです。
「…いいじゃん。似合ってる。」
それだけでした。
でも、そのひと言に、私はものすごく救われたんです。
ウィッグをかぶることへの不安。
家族にどう見られるかという戸惑い。
すべてが、ほんの少し、軽くなった気がしました。
■ 家族だからこそ、言葉は少なくても
あれからも、息子は特に何も言いません。
でも一度だけ、買い物の帰り道にふとこう言いました。
「オレ、あんまり気にしてないから。」
それがどれだけありがたい言葉だったか、本人はきっと気づいていないと思います。
■ 自分らしくいることが、子どもにも届いている
ウィッグは、自分を隠すものではなく、
“いつもの自分でいるための手段”なんだなと、あらためて思いました。
息子は変わらず、返事はそっけないし、目もあまり合わせてはくれないけれど、
それでも私は、ちゃんと受け入れられていると、感じられています。
※お客様からのお電話でのご意見ご感想より、一部抜粋、加筆させていただきました。
医療用ウィッグ・かつらについてご不明な点があれば、医療用ウィッグアンベリールへお気軽にご相談ください。